世界のCNPから

くろるろぐ

ダークレベル:4

キスマークが死ぬほど嫌い

明日から後輩たちと旅行へ行く。一ヶ月以上前から楽しみにしていた旅行である。髪を染め直したり常備薬を医者からもらっておいたり、そこそこソワソワしながら待ち望んでいた。 恋人氏にキスマークをつけられるまでは。 弁明しておくと性行為に及んだという…

耳朶に穿孔、自我に閃光

喫煙所の空気は冷たく、苦い。カラーコーンとポールとを使って区切られたその空間は、まるで動物園の檻のような、疫病患者用の待機室のような、隔離の意図を孕んでいる。 君は好きで煙草を吸っているのか、と訊かれたら僕は、まず相手の顔色を見て、答えるべ…

こんにちは新しき現実よ

こんにちは新しき現実よ。— Te.奇 (@_CNP_) 2022年10月15日 結婚しよう、と、あの子は言った。 わかった、と、僕はゆっくり答えた。 それですべてが決壊した。 さよなら古き夢よ - 世界のCNPから 恋人氏は、本当はずっとすべてを「はっきり」させたかったの…

さよなら古き夢よ

さよなら古き夢よ。— Te.年始クロル (@_CNP_) 2022年1月7日 結婚はできない、と、あの子は繰り返した。 かまわない、と、僕ははっきり答えた。 それですべてが解決した。 恋人氏には姉がいる。その姉が、「ずっと男性を見下してきたにもかかわらず三十路にな…

自分のメンタルと向き合う人の独言⑩選

「当日見かけたものを題材に」と宣言したので、見かけたツイートを題材に、ひとつ。 今朝こんなツイートを目にした。 『メンタルが安定している人の特徴⑩選』をまとめました。1番伝えたい特徴はプロフの最後に残しています。 pic.twitter.com/gV0a2yZfZQ— あ…

第█回 中間テスト成績報告

〜科目1 試験開始〜 被験者「で、どうだった。この休日、僕と過ごして」 試験官「どうって?」 被験者「一応、掃除や洗濯や買い出しは請け負ってみたが」 試験官「うん、助かった。本当にごめんね」 被験者「謝らないで」 試験官「んー、……ありがとう?」 被…

駅構内の、人々の導線を外れた吹き溜りのような場所に、ひと組の男女が抱き合いながら立っていた。絡み合ったそれはひとつの生きた塊のようだった。それが睦み合うように左右に揺れるたび、おそらくどちらかの体が近くの壁にぶつかっているために、かちんか…

好きだ

友達が、好きだ。 これが生半可な“好き”ではないということを、どうしたら我がすべての友達に分かってもらえるだろう。 僕は自由な時間をいくらでも友達のために使いたい。僕は口座にある金をすべからく友達のために払いたい。僕は友達が「誰でもいいから人…

誕生日なのが嬉しいんじゃなくて、はしゃぐ言い訳がほしいだけ

前略、 夜明けだ! と思った。二十五歳。僕が生まれて四半世紀が経った、らしいけれど、たぶんそんなことはないと思う。僕はまだ十四歳で、数学が苦手で、文学部を目指していて、AV鑑賞のほかに際立った趣味もなくて、放課後の黒板に落書きをしていて、恋愛…

そういう意味で僕はいま

昨夜、20時過ぎ。仕事を終えて退社した僕を待っていたのは、すべての灯りが消えた自宅だった。 この真っ暗な家を目にした時点で、僕はひどくがっかりした。このくらいの時間なら、いつもであれば家族――父親と祖母――がテレビの前で歓談しているはずで、そうで…

二日酔い

泥酔を主原因とする不調が未だ抜けきらない体に鞭打って、僕は夜道を散歩しに出掛けた。本当なら凡そ十二時間前には遊びに出掛けるつもりだったのだが、平常であれば動くはずの体が今朝方はまったく言うことを聞いてくれなかったのだ。仕方なしに日中をだら…

九年前のあの夏の日

「水鉄砲で遊ばない?」 夏場は家から出ない、と宣言していたあの子がそんなことを言いだしたのは、今から九年前の八月のことだった。ちょうど今と同じように、ミンミンゼミが求愛活動に励んでおり、目にしみるほどの青空が千切れた白雲を抱いており、湿度を…

きらきら

缶入りの日本酒を飲みながら歩いた、曇天の夜だった。一人ということを考えた、死ということを考えた。偶然にも帰路にはお誂え向きの踏切なんかがあった、しかも僕は直前に楽しげな人々の群れを見ていた。きらきら。星のない夜に、街灯だのヘッドライトだの…

「平成最後」の瞬間、僕は

「平成最後」の瞬間、僕は酒に酔った頭で恋人とふたり「トポロメモリー」というゲームをしていた。 トポロジーで遊ぶ?理系ボードゲーム制作プロジェクト! - FAAVO東京23区 トポロジーは、何らかの形(かたち。あるいは「空間」)を連続変形(伸ばしたり曲…

明日の来るのが怖い

パジャマの上からロングコートを羽織って外へ出た。外気は生温かった。男子高校生の集団が大声で歌いながら自転車を走らせていった。あ、と思う間もなく泣いた。それから舌打ちをした。いつのまにか舌先に膨らんでいた口内炎が歯に叩かれて鋭く痛んだ。 明日…

東京国立博物館

先日、大学時代の知り合いたちと連れ立って上野の東京国立博物館( 東京国立博物館 - トーハク )を訪れた。 特別展は 「 両陛下と文化交流―日本美を伝える― 」 ・ 「 国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅 」の二本立て。せっかくなので両方とも見てきた。 それぞれに…

もう22時半じゃないか

この汚れた部屋を片付けて恋人と会う権利を再び勝ち得るか、恋人と会う権利を失ってでも部屋の片付けから逃げ切るか? 僕は生まれた時から今に至るまで片付けが下手だ、下手というか苦手というか嫌いだ。現在の僕がゼロから始めればさすがにここまでの事態に…

僕の風邪は喉から始まる

僕の風邪は喉から始まる。物を飲み込むのも声を発するのもしんどいような痛みが襲ってくる。 喉を痛めると、つくづく喉の大切さを思い知る。生命維持のための食事も呼吸も、意思疎通のための発声も、受け持っているのは喉だ。ここが痛むと日常がかなり重だる…

僕は努力を放棄している

僕は努力を放棄しているのかもしれない。それが上司の目にも明らかなのかもしれない。僕が無能で無謀で無気力であることを、あらゆる人々はすでに知っているのかもしれない。僕はそれを自分に対して誤魔化しているだけなのかもしれない。 相変わらず仕事が面…

何せ眩しすぎるのだ

いつもの時間いつもの駅、傘なんて久しく持ち歩いていない僕は雨に打たれながら帰路についていた。日本屈指の汚濁繁華街である新宿駅も、こうして濡れているときだけはその醜い輪郭を失うのだった。やはり光がだめなんだな、と僕は思った。何せ眩しすぎるの…

先輩も上司もインフルエンザに罹患して休んだので、僕はひとり作業を続けていた。終業のチャイムが鳴って、それでも作業していた。まもなく20時になります、それでも帰らなかった。まもなく22時です、22時以降は深夜残業になります、そんなアナウンスを耳に…