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世界のCNPから

くろるろぐ

性犯罪者になるのは思ったより簡単かもしれない

大学が終わって僕は抱えている借金のことを考えながらバイト先へ向かっていた。金がないので昼飯は家で炊いてきた茶碗一杯分の白米でふりかけご飯、夜もうまく眠れなくて寝不足、そんな状態で恋人を訪ねることもできなくて、僕の頭の中は絵筆を洗うバケツの水みたいになっていた。

そんな矢先、僕の横をすり抜けるようにして、女の子が三人、並んで歩いていった。

三人揃って白髪ひとつない射干玉の黒髪を、ひとりはおさげ、ふたりは低いポニーテールにしていた。紺一色のセーラー服だった。膝まであるスカートに、ふくらはぎの下の方だけ覆う長さの白い靴下を履いていた。

僕はiPodを操作して、聴いていた音楽を止めた。

女の子たちは学校であったことを話しているようだった。話の内容はよくわからなかった、ただ笑い声が耳についた。決してお淑やかではない、むしろ下品に類するようなあっけらかんとした笑い方だった。

この娘たちは、と僕は考え始めた。たぶん教室でいつも通り一緒に帰ろうと言い合って学校を出てきたのだ。お互いに当たり前のような顔をして帰路についているのだ。これから寄り道でもするのかもしれない。誰かがコンビニに寄ろうと言い出せば残るふたりは当然のようについていくのだろう。

僕は妙な気分になった。

今ここでこの三人のうち誰かの髪を引っ張って地面に叩きつけたらどうなるだろう。いやそれよりもうまいことやって、ひと気のないところへ呼び寄せたらどうだろう。三人まとめて相手できる自信はないけれど、ひとりをめちゃくちゃにしている間は他の女の子たちを縛っておけばいい。泣いたり喚いたりしてくれるだろうか。それとも思ったほど絶望してくれないものだろうか。笑い話のネタにされるかもしれない、それはそれで悪くないと思った。とにかく少なくとも殴ってみたいと思った、長いスカートと短い靴下との間に見えるふくらはぎへ噛みつきたいと思った、女の子たちが泣けばいいと思った。

いや嘘なのだ。ぜんぶ嘘だ。本当は僕も女子中学生になって女の子たちに混ざりたい。何も疑わずに、みんな仲良しの友達だと信じて、心から笑って、みんなアイスでも食べに行こうよなんて誘ってみたい。女の子たちはいいねって笑ってくれるに違いない、僕はそれを信じて疑わない、晴れた空と春先みたいな気温と、シンライ、ユウジョウ……

そんなことを考えているうちに、女の子たちはいつの間にか道を曲がって何処かへ行ってしまっていた。僕は黙って音楽をかけなおし、バイト先へ急いだ。脳内バケツの水はすっかり真っ黒になった。今日は五時間労働である。

追伸:私小説風にしたかっただけで深刻に病んではおりません、あと性犯罪者にはなりません。