虚無になってる
オタクだからすぐ「虚無」と言ってしまう。
デジタル大辞泉の解説
きょ‐む【虚無】
- 何物もなく、むなしいこと。空虚。
- この世に存在するすべてのものに価値や意味を認めないこと。「虚無感」
- 虚心であること。「虚無自在の心」
- 無限の宇宙。大空。虚空(こくう)。
- 古代中国の老子の哲学で、万物の根源・本体は、はかりがたく無であるということ。
(参考: デジタル大辞泉収録キーワード一覧 59430件目から59500件目 - コトバンク )
ちゃんと定義を再確認してみるとなるほど、「虚無」なる熟語は僕の抱く拠り所のない感情をほどほどに表してくれているような気もする。
茫漠とした社会、何者にもなれない自分、ただ過ぎていく時間、理想と現実、焦燥と諦念、そんなぐちゃぐちゃの感情がふと凪いで、脳髄から全てが失われて、そして、虚無。
「むなしい」と「ない」とを組み合わせた究極の「無」は、あらゆるものを包み込んで見えなくしてしまう、そして僕はぼーっとしながら、「虚無になってる」とつぶやくのだった。オタクだからな。
しかし、デジタル大辞林氏でいう第4項目はちょっと気に入った。「虚無」が無限の宇宙と繋がっている、というのはなかなか悪くないと思った。全てを投げ出して茫然自失、そんなときの僕は、宇宙のオタクになっているのだ。悪くない。
宇宙のオタクとなった僕は、地球人よりも強い。地球上のいかなる悩みや病気にも強い。はずである。何しろこっちは宇宙なのだから。一惑星の上にしがみついている一存在たちに負けるはずがないのだ。
などと思えるなら、この「虚無」にも意義はあるような気がする。
まあふざけるのはさておき、ぼーっとしてしまう自分をあまり責めない方がいいんだろうな、とは思う。
といっても僕は自責の念をあるていどは保ち続けておかないとすぐ気を抜いて全てをダメにしてしまうので、やっぱり責めておいた方がいいような、気もしはじめる。
「万物の根源・本体は、はかりがたく無である」……。
まあつまり、いずれに転んでも無であるなら、本当は何事にも悩む必要なんてないんだろうな。
本当は。
…………。
オタクだから虚無になってる。