那須へ行った
那須へ行った。
社の偉い人が那須ハイランドパークの入場無料券・アトラクション乗り放題割引券をくださったので、せっかくだから行ってみようということで某と一緒に遊びに行くこととした。
しかし僕は「那須塩原」が東京からどれほど離れているかイマイチ把握していなかった。日帰りで余裕っしょという軽いノリでいた。それが今回の悲劇の根本的な原因であった。
朝、9時ごろに某邸を出発した。そもそもこの時点で遅すぎたのだが、僕特有の楽観的態度が危険から目を逸らさせていた。
もちろん、新宿あたりから新幹線を使って移動したなら、那須塩原駅までは1時間半で着くはずだった。しかし、某邸は少なくとも新宿周辺ではなかった。そこが計算違いの始まりであった。
電車に乗って行くこと、3時間半。
さらにそこから、某の運転する車で1時間。
情けなさでいっぱいだった。
まず電車の時間が長すぎた。モンハンをして時間を潰したものの、それでも長かった。
また僕は普通免許を持っていないのでこうするしかなかったとはいえ、運転の全てを向こうに任せながら自分はのうのうと助手席に収まっているというのが、信じられないほどつらかった。バイクなら後ろに乗せられるぞ、と主張してもみたのだが、絶対に嫌だと断られた。
途中で昼飯を食って、罪悪感に満たされつつ那須ハイランドパークへ到着。
これは空。
これは薔薇。
この時点ですでに15時ごろ。ちなみに閉園は16:30であった。もう何しに来たんだよという話だった。
とはいえここまで来てしまったので、何とも言えない表情を浮かべたままの某を誘って入園口に向かい、例の割引券を受付へ出した。すると受付嬢がこう言った。
「ただいま半額キャンペーンをやっておりまして、この割引券を使わない方がお安いのですが、割引券をご利用になりますか?」
???
使うわけねえだろ……
そもそもが割引券を使うための小旅行だったというのに、この展開は衝撃的だった。こういうのを日本語でグダグダというのであった。
ともかく乗り放題券を普通に半額で購入し、割引券をカバンへしまい込み、入園した。
某はこの景色をいたく気に入り、「他はどうあれここはいいと思う」と絶賛していた。なお他は。
よくわからない迷路探検アトラクションで遊んだのち、観覧車に乗った。
これは観覧車から見下ろした景色。
あとは古めかしいゲーセンへ行き、取れもしないニンテンドースイッチを取ろうとして笑ったりなどした。
なんと、園内のエピソードはこのくらいしかない。
帰りも某の運転で駅まで戻り、そこから3時間半かけて某邸の最寄り駅まで戻った。
某は終始暗い顔をしていて、「見積もりが甘かった」「失敗した」「ごめん」と繰り返していた。僕はつらかった。見積もりが甘かったのも失敗したのも謝らなきゃいけないのも僕だった。けれど、僕は何だかんだ楽しかったのだ。そこが本当に苦しかった。
楽しかったと思っていたのは僕だけで、向こうにとっては「失敗」でしかなかったのだと、向こうにとっては「失敗」でしかなかったのに、僕だけが楽しんでしまったのだと、思った。
こういうのは禁句であるということを重々承知の上で、「楽しくなかった?」と聞いた。某は目を泳がせながら「タノシカッタヨ」と答えた。
次は一泊旅行でプランを組もう、そして一刻も早く普通免許を取ろう、と僕は心から決意した。