世界のCNPから

くろるろぐ

ウェイ大学生ってこういう会話をしていそう(偏見)

はー、マジ調子乗って飲みすぎた。つかこれ何杯目だよ。俺、顔赤くなってね? 大丈夫? あんま顔には出ないんかな。ただ今ね、すっげ眠い。

こんで明日も1限とかマジだりーわ。冷静に考えて必修が1限に集中してんのおかしくね? 出れるわけねーじゃん。実験レポートも書いてねーよ。まあ締切は来週だけど。あんなもんウィキペディアコピペして終了だわクソが。

つか研究室の教授がマジクソでさ……中間報告、俺はやらなくていいっつってたのに先週いきなり「時間余りそうだから君もやって」とか言い出してさ。準備とか何もしてないんすけど? っつーね。

お前はまだいいよなー、あの研究室だろ? 何書いても卒業できんじゃん。俺もそっちにすればよかった。お先真っ暗だよマジ。

 

真っ暗といえばさ、お前あの彼女とはどうなったの? 別れた? マジ? よかったじゃーん、お前マジで死にそうになってたもん。いやマジで。顔色とか最悪だったよ? 気づいてなかった? おつおつ。まあお前の傷心を祝って……祝っちゃダメかw 癒して? なんか飲もうぜ。すいませーん、レモンハイひとつ。

お前は? じゃあ角ハイもひとつで。あとは? みんないい? じゃあそれで。うーっす。

 

つか今だから言うけどさ、あの女、俺の先輩の元カノだったんだけど、先輩のことも潰しちゃったんよね。ヤバくね? LINEから他の女の連絡先を消さしたりとかインスタ監視したりとかしててさ……俺ら割とよく飲みにいってたんだけど、あの女が来てからは飲み行けなくなってさ。いや女が嫌がるからっつって。こえーよな。んで結局、先輩が浮気されて終わってた。いや先輩「が」な。あの女が浮気してたってこと。まあね、サークルとかでも噂にはなってたけどね。頼めばヤらしてくれるとかいって……いや俺は頼んだことねえからw ただ俺の友達はたまに行ってたらしい、まぁ割と何つーかよかったらしいよ。巨乳だし。

 

え、なに、なに笑ってん。……は? そんときの浮気相手、お前なの? …………クッソwww マッジかよお前ww クズじゃんwwww え、じゃあ全部知ってた? マーージで? うーわウケる……いやウケちゃアカンんけど、ウケるわ。え、じゃあ誕生日とか……お前と会ってたのかよww 先輩くっそ落ち込んでたのにwww あーーあww 何やってんだお前www はぇーしかし女もヤベェな。ドロドロやんけ。まあ別れてよかったなっつーことで……すんませーん、ジントニックひとつ、あ、ふたつで。まあ飲め飲めw

 

んで? どうやって別れたん……浮気? お前が? 向こうがか。まあ、だろーなー。なんて? 満足できなくなった的な? いやLINE晒すのはアカンやつでしょw 見るけどw ……うわ、うーわww きっつ……「あなたに心を開ききれない」……いやw 股は開ききったやんw

しんどいなーしかし……お前短小なの? え、だってほら「物足りない」とか書かれてんじゃん……あっ体の話ではなくw ワリw 

 

まー今度合コンでもしよ。同じ研究室の子がやりたい的なこと言ってたし。いや合コンをだからww お前そういうのマジやめろww

ここ4人いればメンツ的には足りるし……は? 彼女? お前それいつから? 先週!? マジで言ってる? こわ……きも……w いや嘘ウソ普通におめでとうだけどマジかよ。写真とかある? あんのかよw や、ハメ撮りは要らんわw 普通に顔わかるやつ、あ、それでいいよそれで。その隣の。

 

……え。……それさっきから言ってた女なんだけど。

クッソwwwww何なのお前らwww キッツwww キツすぎんでしょwwwww いやすっげえなマジ、クッソwwwww やっばwwww はーやべ腹いてぇわww なんなんwww お前マジ……頑張れw まぁほら次はダイジョーブだってw さすがにねw

あ、はーい。飲み物ラストオーダーだって、なんか要る? 水飲む? んじゃ水4つおなしゃーす。 やー面白い話聞けたわ、蚊帳の外だけどw まー頑張ってなw お会計お願いしまーす!

 

〈いま解散するとこ

 お前の話めっちゃ出てて笑った笑

 既にハメ撮りまでいってんのヤバない?w

 今回も期待してまーす笑〉

ん? いやただのLINE。友達。で? もー帰るっしょ? 忘れもんとかない? つかもう終電じゃね?w 駅向かうかー。

お前はこれから彼女んち? いいっすねーw いや真面目な話、過去は過去だからね? どーにかなるっしょw マジ応援してる、な。な? んじゃ俺こっち線からだから、じゃーねー。

 

 

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ウェイ大学生ってこういう会話をしていそう(偏見)

 

日曜夜、某と飯を食いに行った。時刻は20時過ぎだったし、ワインやステーキをメインとしたやや小洒落系の店だったし、客は少ないだろうと踏んでいたのだが、隣のテーブルを大学生と思しき集団が囲んでいた。

時折聞こえてくる会話は大学生らしい瑞々しさと下劣さに満ちていて、僕は盗み聞きしちゃまずいと思いつつも思わず微苦笑してしまった。

 

上にざくざく書いてみた会話は僕の完全な空想であって、現実の大学生たちがこういう会話をしていたわけではない、ということだけは断っておきたい。

けれども、顔つきや服装や声の出し方や笑い方から、何となくこの手の会話をしていそうだと思った(偏見)。更にそこに大学生なりのこじれた人間関係が絡み付いていたら面白そうだと思った。しかし口調が難しすぎるな。文字に起こすと特に。

 

……僕は本当に恵まれた大学生活を送ったので、こういうこじれた事態には一度も遭遇しなかった。四年間の大学生活において、ヤるヤられるの性関係に巻き込まれなかった。周囲の人間にもそういうタイプの人はいなかった。

僕らは文学作品の解釈が本当に大好きだったから、現実の性生活を乱れさせている暇なんかなかったのだ。それに僕には既に某を守る義務があったので、そもそも他の誰かとどうこうしようという気すらなかった。

 

だから逆に、僕はああいうタイプの大学生が送りがちな性的生活の内実をほとんど知らない。イメージでしか語れない。様々な女性と関わり、交わり、最高の射精のために人間関係をこねくり回していくような生活……というものが、僕にはよくわかっていない。

 

おそらく、人によってはああした性生活も意味のあることだろうと思う。得られるものもあるだろうと思う。僕は、刹那的快楽というものが悪いものだとは思っていない。刹那、すなわち「今」のこの瞬間を濃密な快楽で埋めることも、「今」を生きていく上で必要となってくる場合は往々にしてある。

だから「よくわかっていない」で思考を放棄してしまうのはもったいないと思っている。

 

けれども。

僕自身が実際にあのように生きられたかと聞かれると、答えははっきり否である。まず某への愛情が深いため他の人間と変なふうに関わりたくないからというのが前提としてある。次に、僕は見ての通りそういう性格じゃない。最後に、僕は醜男なのでそもそもそういう生き方のスタートラインにさえ立ちようがない。

ゆえに僕は、彼らのような生き方を、すごいなあと思いながら遠目に見ている。隣の線路を行く電車を別の電車内から眺めるように。

 

すごいなぁ。

 

しかし重ねていうがこれは完全に偏見である、割と最低な偏見である。ごめんな、見ず知らずの大学生たち。しかし彼らの笑い声は本当に楽しそうで、まさに刹那を快楽で埋めているようで、ちょっと羨ましくもあったのだ。

もちろん僕は乱れた性生活を送りたくはない。だから僕の言いたいのはそこじゃない。ただ、明日の1限を憂いながら酒をガブガブ飲む彼らの、あの笑い方のことを言いたいのだった。