世界のCNPから

くろるろぐ

明日の来るのが怖い

パジャマの上からロングコートを羽織って外へ出た。外気は生温かった。男子高校生の集団が大声で歌いながら自転車を走らせていった。あ、と思う間もなく泣いた。それから舌打ちをした。いつのまにか舌先に膨らんでいた口内炎が歯に叩かれて鋭く痛んだ。

 

明日なんて来なくていいと思った。仕事がつらいというよりも、人と会うのがつらかった。のんびり他愛のない話をさせてくれる人としか会いたくなかった。嫌な思いをしたくなかった。

 

どうしてあんなにも先輩と気が合わないのだろうと思う。仕事以外の場においては、雑談もするし冗談も言う、そんなに仲の悪い間柄でもないのだ。しかし仕事が絡んだ途端、我々はどうしてもうまくやれない。僕はつまらない作業を効率化したかったし、そのための時間を得たかった。先輩は効率化のために時間を割くくらいならつまらない作業でも地道に終わらせるべきだという性格の人間だった。

僕は皆様が想像する以上に反発し反抗する新人となった、反骨精神の塊となった。けれど先輩も強情だったし、基本的に先輩の方が正しかった。僕はどんどん荒んでいくのだった。

 

明日の来るのが怖い、そんな日々が来ることになるなんて思いたくなかった。ここのところ、高校生を見るたびとにかく悲しくなるようになってしまった。日々を謳歌し、自由を堪能し、人生を満喫する人々、何もかもが羨ましく、眩しかった。

 

楽になりたい、手段は何だっていい、楽になりたい。程よい刺激と、確たる安定と、自己の在り方に対する自信と、そういうのを手にしたい。とはいえ「したい」じゃどうしようもないのだと、自分に言い聞かせては努力を始めるも、世は無常なるかな、このざま。高校生にはなれないし、大声で歌うこともできないし、口内炎は痛むばかりだし、このざま。

 

死にたいんじゃないんだと思う。求めるのは解放。その過程で死んだとしても、それはそれで構わないのだが、あくまでそれは手段であって、欲しいのは解放の方なんだろうと思う。