日本酒と金平糖
冬が舞い戻ったような夜だった。僕は汚い手を擦り合わせてわずかな熱を求めた。電車は遅れていた。
日本酒に金平糖を入れると旨いというので、手慰みにやってみた。アルコールの味しかしないはずの安い日本酒が、毒のようにやけに甘くなった。これは、危険だ。中に劇薬が含まれていても、きっと僕は気づくまい。
我が恋人は、こういう毒を僕にくれようとはしなかった。僕はどちらかというと、不幸のふりをして酔い痴れるのが好きだったのだけれど、我が恋人は真面目で真っ直ぐで、狂うことを好しとしなかった。
死にたい、と口にすると、我が恋人も友人も、それはいけないと言ってくれた。僕はそれを悦びながら、心のどこかで物足りなくも感じていた。僕は、死にたかったのかもしれなかった。あるいは、どこか遠くへ、行ってしまいたかったのかもしれなかった。
嗚呼、あらゆる他者が、我が世界を愚弄する。