セックス・イン・ザ・スカイ
かつてニコニコ動画に中の人ネタで「月島拓也の演説」と「HELLSINGの少佐の演説」とを組み合わせた動画があったのを覚えている人はいないだろうか? あれが中学生くらいの頃とても流行った、暗唱できる奴もいたくらいだった。
「ふふふ……セックス……セックス……
みんなセックスしつづけろ……
激しく、もっと激しく……」
ってな感じで続く「月島拓也の演説」と、
「諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が大好きだ」
から始まる「HELLSINGの少佐の演説」、
以上を単純に組み合わせて、
「諸君、私はセックスが大好きだ」
「平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で
この地上で行われる
ありとあらゆるセックスが大好きだ」
……というような動画だった。
教室の片隅、僕を含む童貞ズ数人で、これを詠唱していた。
そんで、「空中でセックスって何だよ」とか何とか言って小突きあった。「セックス・イン・ザ・スカイ」とか何とか言って笑いあった。かの有名バンド「忘れらんねえよ」がライブで叫ぶよりも、実は僕らの方が先だったんじゃないかと思う。
冷静に考えれば、空中以外の場所もセックスするにはキツそうなラインナップだ。海上でセックス……とは……?
しかし僕らは今も昔も子どもなので細かいことはわからないのだ。
……空飛ぶオートバイ、という言葉がいきなり頭の中に浮かんできて、これは本当はハリー・ポッターに出てくる魔法のオートバイのことなんだけど、そこから「空飛ぶ」という部分だけが脳内で抽出されて、中学時代の思い出を引っ張り出してきた、ので語った次第。
悪くないと思うんだけど、どうだろう。
童貞同士でヘラヘラ笑いながらセックスセックス言っていたあの頃、陽キャ連中は既にマジのセックスを楽しんでいた(かもしれない)あの頃、ってのが。
「まだ笑えた」頃、ってのが。
字面で見るぶんには、悪くないと思うんだけど。
まあ、あの頃に戻りたいかと聞かれたら、「別の道を使ってここへ来られるなら戻りたい、同じ道を辿ってここへ着くなら戻りたくない」というのが答えだな、と思った。
僕のバイクは空を飛ばない。だから運命を劇的に変えるような何かを起こしてはくれない。せいぜい地べたを走り回ることくらいしかできない。でもまあ、走り回ってくれりゃ充分だ。