世界のCNPから

くろるろぐ

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

駅構内の、人々の導線を外れた吹き溜りのような場所に、ひと組の男女が抱き合いながら立っていた。絡み合ったそれはひとつの生きた塊のようだった。それが睦み合うように左右に揺れるたび、おそらくどちらかの体が近くの壁にぶつかっているために、かちんか…

# 「そういや僕のボールペンが見当たらないんだけど、置いてったかな」 「うちに忘れてったなら捨てたかもしれない」 「なんでそんなことを」 「この部屋にあるものは全部わたしのものだから」「そりゃ君の家だからな」「だからあなたもわたしのものだよ」「…

四十五分間

夜道をひとりで歩くのが僕の趣味だった。本当は夜道でなくともいいのだが、都会に生きている僕にとって、程よい時間帯というと深夜から早朝くらいしかなかったのだ。 満ちるでもなく欠けるでもなく半端に膨らむ月はまるで僕みたいだった。満たされれば満たさ…