ローストビーフ丼を食べたい
僕の大学には昼休みの時間にローストビーフ丼を提供する車が来ることになっている。
今日も来た。
外のベンチにひとり腰掛けふりかけご飯を頬張る僕の鼻へ、ローストビーフ丼は容赦なく攻撃をしかけてきた。目を逸らすことはできても、鼻は塞いでおくわけにいかないのだ。
車の前には学生たちが長蛇の列を形成していた。
「お前、金ないって言ってなかった?」
「マッマにお小遣いちょーだいって言った」
秋の風は冷たいのに、香りだけ妙に暖かかった。
ローストビーフ丼は1杯650円。
僕の財布にあるのは500円。
ローストビーフ丼を食べたい。