ヴァイオリンを弾いてきた
なぜ?
ヴァイオリンを弾いてきた。
大学時代の知り合いが「社会人になってから出会いの場がなさすぎてつらいから友達作り的な意味で何か始めたい」と言い出したのが1ヶ月前。
そのあと紆余曲折あって「なんかもう友達は要らんから楽器でもやって気を晴らしたい」と言い出し、「クラリネットとかマンドリンとか色々やってきたけどヴァイオリンはまだだからやってみたい」などというところに落ち着いたのだった。
なぜ?
まあ僕はこの手の「新しいことを始める」みたいなのが割と好きな方だから、その辺は構わなかった。けれども、僕の場合は基本的にひとりで始めたいタイプだ。
なぜなら僕はプライドの高い人間なので、知り合いの前で初心者特有のミスを犯して恥をかくのが嫌だからである……
……というのは2割くらいで、本当は「初心者なのでうまくできない」+「周囲に気を遣わなきゃいけない」というふたつの意識が僕の中で暴れた結果、「誰にも迷惑をかけたくないのに迷惑をかけざるをえなくてつらい」となってしまうからである。
てなわけで、その知り合いがあくまでも「初心者教室の無料体験コース(1回のみ)に行きたいけどひとりで行くのはつらいからついてきて」と言い張るのには驚いた。
まずヴァイオリンどうこうの前に、楽器を演奏するにあたって僕には重大な問題点があった。
僕が 楽譜 なんか 読めない こと 知ってるだろ〜w
大学時代、確かに僕は楽器系サークルへ入っていたことがある。なんか弾けたらカッコいいかなと思っていたのだ。しかしそのサークルもまさに「楽譜を読めない」ということを理由として即座に辞めている。そもそもその知り合いと出会ったのもその楽器系サークルであるのだから、僕が音楽に関してクソザコであることくらい知り抜いているはずではないか。
……という話を5億回くらいしたのだが、無念、知り合いは楽器に明るいタイプの人間なので「カタカナでドレミを振っておけばいいんだよ!」と笑い飛ばすばかりだった。
まあ僕も仕事がつらくて死にたくなってきているし、気晴らしってのは悪くない、おとなしくついていこう……そう観念して申し込みをしてやり、ついていったのが本日、という運びである。
結論。
ヴァイオリン、クソ楽しくね!?!?
まあ先に言ったように僕は楽譜なんか読めないので、楽譜どおりに弾いていきましょうと言われたときは普通に死んでしまった。
さらに言うと音感もリズム感もないので、先生の履いてらっしゃるピアノの音と自分の出している音とが違うということも分からなかったし、メトロノームのリズムに従って弾かなきゃいけないというのも分からなかった。ちんぽこ。
そんなこんなでマスオさんもビックリのゲロ音割れ不協和音を出しつづける機械と化した僕だったが、しかし、しかし、それでも言いたい……クソ楽しかったと。
とにかく「弓を弦に当てて擦ると音がする」ということ自体が面白かった。新しいゲームを始めて、Aボタンを押すとビームが出るということ自体に感動するような感じだ(普通の人はそんなことで感動しないのかもしれないが……)。
知り合いは楽器に長けているのでもっと楽しそうだったし、はっきり言って僕の音がクソ邪魔だっただろうなとも思ったが、僕は誘われた側なのだし許してもらいたい。
生徒は僕と知り合いとの2人しかおらず、あとは52歳の優しい先生がいるだけだったため微妙に気まずくはあったものの、1時間弱の稽古をなかなか楽しく過ごした。
僕はこれなら本格的に習いはじめてもいいなと思った……もし今が繁忙期でなかったなら。
もし、今が繁忙期でなかったなら!!!!!!!!
これから12月にかけて僕は22時帰宅を余儀なくされる社畜と化すだろう、昨年の今頃を思うとそれは避けられない。……ヴァイオリンを弾くので18時に上がらせてください、というのがどこまで通用するか。
たぶん上司も表向きは「趣味は大事だから調整してあげるよ」と言ってくれるだろう、それは予測できる、が、「本当は迷惑なので避けてほしい」というのを匂わされながらそれを押し切るだけの勇気と権力とが僕にあるだろうか……
てなわけでひとまずその場で申し込みすることは避けて、繁忙期を明けてから考え直すことにした。どうなることやら。でもちょっと予想より楽しかったのは事実で、……たまには新しいことをやってみないといかんなぁと思った日であった。
完。