世界のCNPから

くろるろぐ

愛を伝えたい、だとか?

季節外れのイルミネーションがあんまり綺麗で笑ってしまった、深夜零時のことだった。三寒四温の時期に相応しく寒さと暑さとを繰り返す三月も半ばを過ぎて、外気は散歩に適した甘さを含んでいた。

 

雨に濡れた地面が街灯の光を受けて光っていた。動きたくない、と思った。鉄道の走り去る規則的な音がしていた。千鳥足に夜気が絡みついていた。

 

公園を、見つけて、ベンチに腰掛けた。ひっくり返らんばかりに空を仰ぐと、木の葉が風に揺れているのを見ることができた。濁った空に、汚れた葉の色。

 

このまま寝てしまおう。

 

空気が少しずつ冷えながら周囲を取り巻いていた。酩酊した脳髄に、優しい冷気が刺さっていた。あらゆることがしがみついてくるこの人生において、夜風は唯一、そばを通り過ぎてくれる存在だった。

 

ベンチの木が。あまりに。優しくて。ここから動きたくなかった。誰にも心配されたくなかった。誰とも顔を合わせられなかった。酒瓶を入れたビニール袋が風に煽られて音を立てた。どこにも行けない。どこにも行かない。このまま。寝てしまおう。