世界のCNPから

くろるろぐ

中二病がかった内容です

四十五分間

夜道をひとりで歩くのが僕の趣味だった。本当は夜道でなくともいいのだが、都会に生きている僕にとって、程よい時間帯というと深夜から早朝くらいしかなかったのだ。 満ちるでもなく欠けるでもなく半端に膨らむ月はまるで僕みたいだった。満たされれば満たさ…

好きだ

友達が、好きだ。 これが生半可な“好き”ではないということを、どうしたら我がすべての友達に分かってもらえるだろう。 僕は自由な時間をいくらでも友達のために使いたい。僕は口座にある金をすべからく友達のために払いたい。僕は友達が「誰でもいいから人…

石になりたい

生まれ変わったら石になりたい。 あまり大きな石でなくていい。けれど、できれば子どもたちが川で水切り遊びをするのに使いたがることのない、かといって石燈籠職人が材料にしたがるわけでもない、ほどほどの大きさの、歪で無難な石がいい。苔むしているとな…

愛されないことよりも、愛させてもらえないことの方が怖い

ちょうど一年前、僕はここで猫耳少女と話をした。 そのとき彼女は、「自分のことを好きなだけ話していい」と言ってくれた。僕はお言葉に甘えて、自分のこと、自分の好きな本のことを話した。僕の話が彼女にとって面白かったかどうか僕には判じかねたけれども…

そういう意味で僕はいま

昨夜、20時過ぎ。仕事を終えて退社した僕を待っていたのは、すべての灯りが消えた自宅だった。 この真っ暗な家を目にした時点で、僕はひどくがっかりした。このくらいの時間なら、いつもであれば家族――父親と祖母――がテレビの前で歓談しているはずで、そうで…

二日酔い

泥酔を主原因とする不調が未だ抜けきらない体に鞭打って、僕は夜道を散歩しに出掛けた。本当なら凡そ十二時間前には遊びに出掛けるつもりだったのだが、平常であれば動くはずの体が今朝方はまったく言うことを聞いてくれなかったのだ。仕方なしに日中をだら…

九年前のあの夏の日

「水鉄砲で遊ばない?」 夏場は家から出ない、と宣言していたあの子がそんなことを言いだしたのは、今から九年前の八月のことだった。ちょうど今と同じように、ミンミンゼミが求愛活動に励んでおり、目にしみるほどの青空が千切れた白雲を抱いており、湿度を…

きらきら

缶入りの日本酒を飲みながら歩いた、曇天の夜だった。一人ということを考えた、死ということを考えた。偶然にも帰路にはお誂え向きの踏切なんかがあった、しかも僕は直前に楽しげな人々の群れを見ていた。きらきら。星のない夜に、街灯だのヘッドライトだの…

「平成最後」の瞬間、僕は

「平成最後」の瞬間、僕は酒に酔った頭で恋人とふたり「トポロメモリー」というゲームをしていた。 トポロジーで遊ぶ?理系ボードゲーム制作プロジェクト! - FAAVO東京23区 トポロジーは、何らかの形(かたち。あるいは「空間」)を連続変形(伸ばしたり曲…

「本当のところをいうと、僕はこう思うのです」

「じゃあ会社内に本音で話せる相手っている?」 上司からそう聞かれて僕は何も答えられなかった。その上司は弊社内でいうと相対的に僕の最も尊敬している上司で、だからわざわざ飯の誘いを飲んだくらいの相手なのだが、それでも何も答えられなかった。 本音…

僕の風邪は喉から始まる

僕の風邪は喉から始まる。物を飲み込むのも声を発するのもしんどいような痛みが襲ってくる。 喉を痛めると、つくづく喉の大切さを思い知る。生命維持のための食事も呼吸も、意思疎通のための発声も、受け持っているのは喉だ。ここが痛むと日常がかなり重だる…

歩けよ乙女

今更ながら、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」を読了した。 これは前半までの記事。 cnp.hatenablog.com 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 2008/12/25 メディア: 文庫 購入: 84人 ク…

夜は短し

今更ながら、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」を読んでいる。読みながら恥ずかしくなってしまうような可愛い可愛い作品だったらどうしようかと思っていたけれど、杞憂だった。 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 角川グル…

さて、どちらが「僕」なんだろう

①大きな事故に遭った「僕」。 顔も体もグチャグチャになり、元の容姿は見る影もなく、見た目の時点で完璧に別人となっている。 また事故をきっかけに記憶を失い、今まで学んできたことや得てきたこと、出会ってきた人々のことを全て忘れている。 さらに思想…