世界のCNPから

くろるろぐ

キスマークが死ぬほど嫌い

明日から後輩たちと旅行へ行く。一ヶ月以上前から楽しみにしていた旅行である。髪を染め直したり常備薬を医者からもらっておいたり、そこそこソワソワしながら待ち望んでいた。 恋人氏にキスマークをつけられるまでは。 弁明しておくと性行為に及んだという…

耳朶に穿孔、自我に閃光

喫煙所の空気は冷たく、苦い。カラーコーンとポールとを使って区切られたその空間は、まるで動物園の檻のような、疫病患者用の待機室のような、隔離の意図を孕んでいる。 君は好きで煙草を吸っているのか、と訊かれたら僕は、まず相手の顔色を見て、答えるべ…

こんにちは新しき現実よ

こんにちは新しき現実よ。— Te.奇 (@_CNP_) 2022年10月15日 結婚しよう、と、あの子は言った。 わかった、と、僕はゆっくり答えた。 それですべてが決壊した。 さよなら古き夢よ - 世界のCNPから 恋人氏は、本当はずっとすべてを「はっきり」させたかったの…

さよなら古き夢よ

さよなら古き夢よ。— Te.年始クロル (@_CNP_) 2022年1月7日 結婚はできない、と、あの子は繰り返した。 かまわない、と、僕ははっきり答えた。 それですべてが解決した。 恋人氏には姉がいる。その姉が、「ずっと男性を見下してきたにもかかわらず三十路にな…

自分のメンタルと向き合う人の独言⑩選

「当日見かけたものを題材に」と宣言したので、見かけたツイートを題材に、ひとつ。 今朝こんなツイートを目にした。 『メンタルが安定している人の特徴⑩選』をまとめました。1番伝えたい特徴はプロフの最後に残しています。 pic.twitter.com/gV0a2yZfZQ— あ…

HOLGA DIGITALを買った

しばらく席を外していても、ふと戻ってみるとまだ元の場所に自分の机が残っている、それがツイッターという場なのだなと思った。 それで、カメラを買った。 HOLGA DIGITAL。 例によってトイカメラ。 HOLGA DIGITAL Black 発売日: 2016/02/09 メディア: Camer…

他人と話すときは他人に伝わるように話さなきゃいけなかったのに今までの僕はそれをしてこなかった

僕は他人との会話において、「この人はこう言われたいだろうから/こうは言われたくないだろうからこう言おう」というような、内容面に関する調整には気を配って生きてきたつもりだったが、 「この人はこういう言い方をすれば理解するだろうから/こういう言い…

人の言葉には裏がある

僕は中学1年生の頃いじめられていたらしい。 らしい、というのは、僕自身が全く気づいていなかったから。気づかなかった故に、傷つかなかったから。 僕は小学生から中学1年生に至るまで、他者を溺愛していたし、他者も自分を溺愛していると思っていた。父親…

スマホを落としたらケースに傷がついた、わかりやすい因果関係だ

問題が何処にあるのかわかっていて、その解決策さえ見出せているのに、どうしても片付けることのできない問題、というものがある。僕はこうした問題をひとつずつ箇条書きにしていつも、その大きさに絶望する。 ここのところ気付いたことだが、僕は、“やるべ…

日本酒と金平糖

冬が舞い戻ったような夜だった。僕は汚い手を擦り合わせてわずかな熱を求めた。電車は遅れていた。 日本酒に金平糖を入れると旨いというので、手慰みにやってみた。アルコールの味しかしないはずの安い日本酒が、毒のようにやけに甘くなった。これは、危険だ…

雨が降っていた

とろりと虚空を眺めていたら、電車を何本も逃した。帰らねば、いけなかった。雨が降っていた。 なんだかんだ、近世近代の作家は恵まれていたと思う。デカダンに耽溺するだけの、余白があった。現代の僕らには余白がない。行間もない。ぎゅうぎゅう詰めの予定…

第█回 中間テスト成績報告

〜科目1 試験開始〜 被験者「で、どうだった。この休日、僕と過ごして」 試験官「どうって?」 被験者「一応、掃除や洗濯や買い出しは請け負ってみたが」 試験官「うん、助かった。本当にごめんね」 被験者「謝らないで」 試験官「んー、……ありがとう?」 被…

客観的“精神力の強度”=倫理観の精度×演技力の練度

「 ここのところ僕の人生は、上手く回っている。 思えば僕は、何に悩んでいたのだろう。少しだけ見方を変えれば、世界はこんなにも豊かで、輝かしい。ありがたいことに、僕は愛されている。支えてくれようとする人がいる。仕事はまったく順調で、家族との仲…

谷折り線に従って折ると同じ主題の段落が重なる文章

仕事を終えて外へ出ると、足下の地面がじっとり濡れていた。思わず笑った。また雨に打たれずに済んだらしかった。雨雲には、いつも嫌われていた。 電車の中で、ひとり酒盛りをしている男がいた。彼は座席を四人分にわたって占領して、肴を広げ、缶チューハイ…

自粛ムードと夜

「こういう状況だから、会わない方がいいと思う」 『でも、どうせ会社には出るんだし、家に帰るよりあなたの家へ行く方が早いくらいなのだし』 「会社へ行くのは必要な外出でしょう。遊びに来るのとは違うよ」 『でも、家に帰るのと似たようなものじゃない?…

三月三十二日

三月三十二日、と書き入れてしまったメモを破いて捨てながら、今日から四月に入ったのだということを思い出した。思えば通勤経路の桜並木は命短しとばかりに咲き誇っていたし、心なしか夜風も甘やかになってきたし、自動販売機の飲み物は冷たいものが増えて…

愛を伝えたい、だとか?

季節外れのイルミネーションがあんまり綺麗で笑ってしまった、深夜零時のことだった。三寒四温の時期に相応しく寒さと暑さとを繰り返す三月も半ばを過ぎて、外気は散歩に適した甘さを含んでいた。 雨に濡れた地面が街灯の光を受けて光っていた。動きたくない…

駅構内の、人々の導線を外れた吹き溜りのような場所に、ひと組の男女が抱き合いながら立っていた。絡み合ったそれはひとつの生きた塊のようだった。それが睦み合うように左右に揺れるたび、おそらくどちらかの体が近くの壁にぶつかっているために、かちんか…

# 「そういや僕のボールペンが見当たらないんだけど、置いてったかな」 「うちに忘れてったなら捨てたかもしれない」 「なんでそんなことを」 「この部屋にあるものは全部わたしのものだから」「そりゃ君の家だからな」「だからあなたもわたしのものだよ」「…

四十五分間

夜道をひとりで歩くのが僕の趣味だった。本当は夜道でなくともいいのだが、都会に生きている僕にとって、程よい時間帯というと深夜から早朝くらいしかなかったのだ。 満ちるでもなく欠けるでもなく半端に膨らむ月はまるで僕みたいだった。満たされれば満たさ…

好きだ

友達が、好きだ。 これが生半可な“好き”ではないということを、どうしたら我がすべての友達に分かってもらえるだろう。 僕は自由な時間をいくらでも友達のために使いたい。僕は口座にある金をすべからく友達のために払いたい。僕は友達が「誰でもいいから人…

石になりたい

生まれ変わったら石になりたい。 あまり大きな石でなくていい。けれど、できれば子どもたちが川で水切り遊びをするのに使いたがることのない、かといって石燈籠職人が材料にしたがるわけでもない、ほどほどの大きさの、歪で無難な石がいい。苔むしているとな…

クロルダイジェスト2019

年末だし「総括」とかいうことをしようとしたが、上半期の記憶が完全に吹き飛んでおり何も総括できなかった。 どう頭を捻っても何も出てこなかった。ここ数ヶ月の人生が、それ以前の記憶を曖昧なものとしてしまっていた。 そこで今回はちょっと本腰を入れて…

めりー☆せっくすます2019

「はいっ! はいっ! はいっ! はいはいっ! わん! ちゅー! ひうぃごー! らぶらぶ! ちゅっちゅ♪」 高校時代の仲間とのクリスマス会も、大学時代からの恩師とのドライブも、曖昧な言葉で断った。「わたくしなりの矜恃ですわ」なんて悪ふざけ一言で僕の言…

愛されないことよりも、愛させてもらえないことの方が怖い

ちょうど一年前、僕はここで猫耳少女と話をした。 そのとき彼女は、「自分のことを好きなだけ話していい」と言ってくれた。僕はお言葉に甘えて、自分のこと、自分の好きな本のことを話した。僕の話が彼女にとって面白かったかどうか僕には判じかねたけれども…

誕生日なのが嬉しいんじゃなくて、はしゃぐ言い訳がほしいだけ

前略、 夜明けだ! と思った。二十五歳。僕が生まれて四半世紀が経った、らしいけれど、たぶんそんなことはないと思う。僕はまだ十四歳で、数学が苦手で、文学部を目指していて、AV鑑賞のほかに際立った趣味もなくて、放課後の黒板に落書きをしていて、恋愛…

小説・他人の遺書

朝起きて郵便受けを確かめると、何やら分厚い手紙が届いていた。真っ白な封書には僕の住所と名前だけが書かれており、差出人の署名はなかった。とはいえ、その特徴的な筆跡はよく見慣れたもので、誰から来たものであるか僕にはすぐわかった。僕は妙な胸騒ぎ…

日本語がわからなくなってビビった

急に日本語がわからなくなってビビった。 なんか変だと思ったのは友人からのLINEがきっかけだった。相手が何を言っているのかよくわからないのだ。別に難解な話でも抽象的な話でもない。ただ、言葉の意味はわかるのに文意が掴めない感じというか、文章が繋が…

病みブログ大好かれたからもっとやります

人間が、人間に奉仕するというのは、悪い事であろうか。 (太宰治「櫻桃」 僕はマヂ病みメンヘラ気取りの道化師なのでわざと自殺を匂わすようなことを言って周囲の気を引こうとするのを生業としている。本当はカケラも苦しんじゃいないのだけれども、メンヘラ…

そういう意味で僕はいま

昨夜、20時過ぎ。仕事を終えて退社した僕を待っていたのは、すべての灯りが消えた自宅だった。 この真っ暗な家を目にした時点で、僕はひどくがっかりした。このくらいの時間なら、いつもであれば家族――父親と祖母――がテレビの前で歓談しているはずで、そうで…